ちょっと知ってるだけで玄人っぽい会話ができるようになる雑学。
今日はエアスピネルの登録抹消の報に触れ、思い出を振り返ってみたいと思います。
大物の予感がした二歳戦
デビューから二戦で重賞初制覇までは、かなりの大物が出てきたなという印象がありました。
デビュー戦は二着に二馬身差の圧勝、二着馬が三着馬に三馬身半差と通常なら圧勝と言えそうな着差だっただけに、エアスピネルのデビュー戦の強さは際立っていました。この新馬戦の三着馬ロジクライは後にシンザン記念を制して古馬になってから富士Sでエアスピネルにリベンジするのですが、このときはまだ知らないことです。
続くデイリー杯2歳Sでは三連勝中の重賞馬シュウジに一番人気を譲りますが逃げ切りを図るシュウジを上がり三ハロンメンバー中最速の脚で差し切って快勝、メンバーレベルも高いなかで圧勝と言える勝利だったことから、GI朝日杯では一番人気に推されます。
しかしその朝日杯では2000mの距離短縮で挑んだリオンディーズが上がり三ハロンメンバー中最速の脚を繰り出して後方から一気の末脚で前を行くエアスピネルを差し切って快勝、エアスピネルは初の黒星、二着となってしまいました。
思えばこのとき、リオンディーズの母シーザリオとエアスピネルの母エアメサイアが争ったオークスを思い出してしまいました。あのときも先に抜け出したエアメサイアをシーザリオが後方から一気の末脚で差し切ってクビ差快勝というレースでした。思えば武豊JKのレース後のコメントに「ここまでお母さん(エアメサイア)に似なくてもいいのに」とあったのが印象的でした。
明け三歳、善戦すれど勝ち切れず
年明け初戦の弥生賞は人気をマカヒキとリオンディーズに譲った三番人気、クビ差でこの二頭がゴール前競り合い、そこから遅れること二馬身差の三着に終わりました。ただ四着以下は五馬身離しており、やはり力の合ったことは窺えます。
本番の皐月賞も四着、ただリオンディーズの降着があって五着入線から繰り上がりの四着でした。リオンディーズの斜行がなかったらどうなっていたかは誰にもわからない結果ではありますが。
続くダービーも四着、皐月賞の上位三頭がそのままダービーでも上位三頭を占める結果でした。リオンディーズには半馬身差先着したけど…、という結果。
秋には神戸新聞杯五着を経て菊花賞に出走、海外遠征のマカヒキ不在ながら買ったサトノダイヤモンドに0.4秒差、ただ後に天皇賞(春)を制する二着馬レインボーラインとはハナ差、そして皐月賞馬ディーマジェスティをクビ差四着に競り落として先着、という三着でエアスピネルの地力を感じたレースとなりました。
こうしてエアスピネルの三歳シーズンは勝利を挙げることなく終わってしまいました。。
しかし三歳で残した成績は決してただのクラシック三冠皆勤賞というだけでなく、皐月賞とダービーを四着、菊花賞三着と距離を問わずに勝ち負けに絡んでいて、やはり良血の底力を感じさせるものでした。
古馬になってマイル路線へ
クラシックで一定の成績を残したエアスピネルは古馬になってからマイル路線に駒を進めます。年明け初戦の京都金杯を一番人気でハナ差辛勝、エアスピネルとブラックスピネルという○○スピネル二頭でのハナ差のワンツーフィニッシュでした。
二歳デイリー杯以来の久々の勝利を単勝1倍台の一番人気で重賞制覇と、ここからマイル路線はエアスピネルが存在感を増してくるものと思っていました。
秋初戦の富士Sを勝利して挑んだ本番マイルCS、ここでエアスピネルがGI初制覇を飾ると確信して本命◎で狙ったものの、結果は三歳馬ペルシアンナイトの末脚が炸裂し勝利、エアスピネルは二着とまたしても勝利を逃してしまいます。
翌年もマイラーズC三着が最高着順で結局マイル路線では悲願達成とはなりませんでした。
ダートで勝負
2020年からはダート路線に転向したエアスピネル。過去にも芝で頭打ちとなったGI馬がダートに活路を求めるというケースは多かったものの、大半は上手くいかず残念な結果に終わっています。
しかしエアスピネルはひと味違いました。
ダート転向初戦となったプロキオンSでは南部杯でGI馬となったサンライズノヴァ相手に一歩も引かず、最終的に一馬身以上差が付いたものの田のダート馬を抑えて二着入線、再び秋に武蔵野Sで再戦したサンライズノヴァとまたしても0.3秒差で三着と好走をみせます。
そして翌年のフェブラリーS、さすがに八歳馬で強調できなかったエアスピネルは当日九番人気、しかし先に抜け出したカフェファラオを上がり三ハロンメンバー中最速の脚で追い掛ける江明日婦寝る、さらにそこに東京コース得意なワンダーリーデルも加わって一番人気カフェファラオが勝利したレースでしたがヒモで荒れる結果となりました。
しかし、ダートに転向して五戦目、集大成となるレースになったエアスピネルはここでも二着、改めて「どこでも、どんな条件でも、走る」というエアスピネルの底力を見たと共に、やはりGIを勝ち切れなかったという壁を感じる結果にもなりました。
そこから交流重賞二着や武蔵野S二着はあるものの勝ち切れず、2021年11月にエアスピネルは現役引退を迎えました。
燃え尽きなかったキングカメハメハ産駒
エアスピネルの父キングカメハメハの産駒はある時を境にフッと燃え尽きたように着を取れなくなるような傾向が出てくる産駒が多くいます。
そんなキングカメハメハ産駒のエアスピネルが齢を重ねて燃え尽きるタイミングが合ったとしても不思議ではなかったのですが、九歳になってもかしわ記念は五着掲示板の好走を見せてくれましたし、次走のさきたま杯では上がり三ハロンメンバー中最速の脚を繰り出して勝ち馬から0.2秒差の四着と、九歳でもまだまだ衰えていない力を見せていたように思えます。
若いときの距離を問わないクラシックでの好走も意外性がありましたが、年齢を重ねてからも好走するその姿にも意外性があった、そして芝もダートも問わず活躍を見せた意外性もある、そんな一頭でした。
勝ち切れない善戦マン=人気者
エアスピネルの祖母エアデジャヴーは桜花賞三着、オークス二着に秋華賞三着とあと一歩でクラシックに手が届かなかった良血馬でした。その仔としてクラシックを期待されたエアスピネルの母エアメサイアも桜花賞四着、オークス二着で母と同様にあと一歩なのかなと思わせて、秋華賞で桜花賞馬ラインクラフトとクビ差の接戦を制して母のなしえなかったクラシック制覇を達成しました。
その血統を受継ぐエアスピネル、あと一歩のところでGI制覇に手が届かなかったその競走生活34戦は九歳まで走って時に穴馬として競馬ファンを楽しませてくれた走りだったように思います。