ちょっと知ってるだけで玄人っぽい会話ができるようになる雑学。
今日はたまに聞く「手前」について。
「手前を変える」とか「左手前」「右手前」という使い方をします。
「手前」とは
簡単に言うと利き脚、みたいなもんです。人間に利き手があって右利き/左利きというように、馬にも右利き/左利きがあります。
詳しくはコチラ。
JRA競馬用語辞典:手前
http://www.jra.go.jp/kouza/yougo/w40.html
利き脚とは「走る姿勢で左右どちらの脚が前に出ているか」で判別されるようです。競馬雑誌や競馬サイトで馬が走る姿を写真で見るとよく分かるのですが、馬は走るとき「四本足をバラバラ(複雑)に動かして全力疾走している」という走り方をしています。この時左脚のほうが前に出ている馬は「左手前の馬」=左利き、右脚の方が前に出ている馬は「右手前の馬」=右利き、といえます。
通常は利き脚に関わらず、右回りコースでは右手前で走るし、左回りコースなら左手前で走るのが一般的です。
これが出来ていない競走馬はコーナーで大きく外に膨らみ(悪い時は逸走してしまい)大きなロスをしてしまうことになります。コースに合わせてちゃんと走る、これ重要です。
左手前の方が得意(スムーズに速く走れるって意味で)な馬はサウスポーと呼ばれ、左回りのコースである東京コース、中京コース、新潟コースで良績を挙げるものの、右回りである中山コースや阪神・京都での成績が今一つに終わってしまうことがあります。
サウスポーの事例=マチカネタンホイザ
例えば、90年代の名(迷?)馬、マチカネタンホイザは実力はGI級(人気は歴代の名馬級の人気を誇っていましたが)と言われていましたが、勝鞍のほとんどは東京コースに集中していた「典型的なサウスポー」と言われていました。
古馬になってから中京2000mのGⅡ高松宮杯で当時最強牝馬と呼ばれていた圧倒的一番人気のヒシアマゾンを差し切るのですが、その中京も左回りコースです。
昔は左回りコースは東京&中京だけだったので右利きのほうが優位という構図でしたが近年は左回りの競馬場は三場に増え昔ほどサウスポーを気にしなくてもよくなっている(気がする)昨今です。
「手前を変える」とは
競馬番組などでたまに「直線のここで、手前を変えています」みたいな解説をみます。
手前を変えるというのは、文字通り、「左手前で走っていたのを右手前に変える」とか「右手前で走っていたのを左手前に変える」ということです。
右回りコースは右手前で走らないとコーナーでロスをします。右手前だけで走り切るのではなく、直線で左手前に変えて最後のラストスパートでさらに伸びる脚を発揮するようになります。
同様に左回りコースを走るときは左手前でコーナーを回ってきますので、レースの道中はずっと左手前で走ることになります。最後の直線で右手前に変えてラストスパートを仕掛けるということです。
直線はどっちの手前で走ったとしてもさほど影響はありません。(ヨレることはあるけど)
コーナーで左手前・右手前を使い分けないといけないから、道中と違う方の手前に最後の直線では切り替えて、余力のある方の(力が出せる方の)手前で最後の直線を走り切ることで、逃げ馬は粘り腰がさらに強化されますし、差し追い込み馬はお終いの脚がさらに切れる脚を繰り出すことができるようになる、ということです。
手前を変えなくても?
手前を変えないと、ラストスパートや二の脚(逃げ馬が最後の直線で粘り込むためにもう一段階伸びること)が利かせられないということがあります。
なので、最後の直線で手前を変える、というのはレースを好成績で走り切るためにはとても重要とされています。
※つまりラストスパートではコーナーで使わなかった余力のある方の手前を使いたいってことです。
2019年フェブラリーSの勝ち馬インティは手前を変えずに走り切ったそうです。(BSイレブン競馬中継で野中調教師がインタビューで言ってました。)
うーん、これは…、インティ強いと思いましたが、手前を変えずにゴールドドリームの強烈な末脚を凌ぎ切って勝利したってことです。これはさらに評価が上がりましたね。