ちょっと知ってるだけで玄人っぽい会話ができるようになる雑学。
今日は関西の名手四位洋文JKが引退となったので思い出を綴ってみようと思いました。
イン抜けの四位JK
四位JKといえば、若い頃はイン抜けが上手いという印象でした。四コーナーでインコースで包まれているものの、ラチ沿いをスルスルっと抜けてきて先頭に立つとそのまま後続を振り切るレース振り、「ああ、また四位JKのイン抜けにやられちゃたよ。」なんて後悔するも先に立たず。
そんな四位JKのイン抜けで愛馬が勝利することがありました。それがセンターライジング。96年エアグルーヴ世代の牝馬クラシックでサンスポ賞四歳牝馬特別(オークストライアル、現フローラS)を勝利した父ヘクタープロテクター産駒の牝馬です。
この年、四位JKは皐月賞をイシノサンデーで勝利(自身GI初勝利)しており、ダービーの有力候補の一角となっていたのが、オークスまでも色気を見せるそんな勝利でした。(センターライジングはオークスに出走しなかったけど。)
若手実力派ジョッキー
それまではゴールデンジャックで勝利した重賞二勝以外は目立った重賞勝ち鞍がなかった四位JKですが、イシノサンデーでGI初制覇のあと、快進撃を見せて有力ジョッキーの仲間入りを果たします。
そのあとも武豊JKが降ろされたダンスパートナーの主戦に(しかもその年の秋にエリザベス女王杯制覇)なっています。
ダンスパートナーで制したエリザベス女王杯なんかは、8枠15番という外枠にも関わらず、四コーナーではいつの間にか最内に入っていてインから抜けてくるんです。
他にもナリタトップロードの主戦渡辺薫彦JKが降りた後に三戦騎乗してマズマズの結果(特にシンボリクリスエスと競り合った天皇賞(秋)は…もう…)を残していたり、的場均JK引退後のアグネスデジタルに騎乗して芝とダートの両方のGIを制覇する大活躍を見せたり、と様々なビックレースで活躍を見せた四位JKでした。
しかしこの後の世代で歴史的な名馬との出会いが四位JKに訪れます。
名牝ウオッカ
歴史的な名馬、四位JKが二戦目から手綱を取り主戦としてクラシックを走り抜けた名牝、その名はウオッカ。
ウォッカではなく、ウオッカ。(よく間違える)
鞍上は四位JKと武豊JKのイメージが強いウオッカでしたが、デビューは佐賀のキングシャークこと鮫島克也JKでした。2020年もまだまだ元気に佐賀競馬に君臨するベテランジョッキーです。
二戦目から四位JKに乗り替わり、500万下(現1勝クラス)で上がり34.1秒という脚を使ったものの、逃げ馬を捕らえきれず二着。しかし、阪神JFで圧倒的人気のアストンマーチャンをクビ差だけ差し切っていきなり重賞初制覇がGI勝利、派手な勝ちっぷりでした。
そこから桜花賞トライアルチューリップ賞を含め三連勝で当然のダントツ一番人気に推された桜花賞、しかし一番人気に推された2歳女王は永遠のライバルとなるダイワスカーレット相手に二着に敗れてしまいます。
その次走に陣営が選んだのはオークスでなく日本ダービーでした。四位JKはウオッカの能力を遺憾なく発揮し、上がり33.0秒の上がりの脚を引き出すと逃げ切りを図るアサクサキングスを差し切ると三馬身差の圧勝、牝馬がダービーを勝利するという歴史的な快挙を達成してしまいました。
しかしここから歯車が狂い始めたような気がします。
ダービーの次走は古馬相手の宝塚記念に出走、一番人気単勝1.6倍に推されて挑戦するも結果は着外に敗れてしまいます。秋には秋華賞三着でまたしてもダイワスカーレットの後塵を拝し、続くエリザベス女王杯で前日オッズ1番人気に推されていたものの当日の朝に右寛跛行を発症し出走取消。
なにかこう、歯車が狂った感のあるウオッカはしばらく勝てないレースが続き、よくある乗り替わり武豊JKという流れで四位JKとコンビ解消となってしまいました。
翌年にディープスカイの主戦となる
ウオッカとコンビ解消となった四位JK、奇しくもウオッカが新しい主戦となった武豊JKをヤネに出走したドバイデューティフリー(結果は四着)の2008年3月29日、日本の阪神競馬場で開催された毎日杯で四位JKは運命的な出会いを果たしていました。
その名はディープスカイ。前走は幸JKでアーリントンCを三着、このときはまだ重賞の好走はフロック視されており六番人気の低評価でした。
降ろされたウオッカが海外に出走したのと同じ日に、乗り替わりでディープスカイに騎乗、そしてここを二着に二馬身半差の圧勝で勝利します。
後から考えると、これって運命的なものを感じる一幕、しかし予想をする時にはこういうのって意外に気づかないもんです。
ディープスカイは四位JKを背に次々と快走を続けます。
NHKマイルCを勝利、まぁここは毎日杯からNHKマイルC好走はよくある流れ、しかし、その次走は日本ダービー、さすがにディープスカイが春の変則二冠制覇で四位JKのダービー連覇はないよ、なんて甘いこと考えていたらば上がり三ハロンのタイムメンバー中最速の脚を繰り出し先に抜け出したスマイルジャックをアッサリ差し切って一馬身半差付けての快勝、ディープスカイで四位JKは日本ダービーを連覇してしまいます。
その後神戸新聞杯の勝利を最後に複勝圏内は外さないものの勝ち切れず翌年の宝塚記念で引退してしまいますが、2009年の安田記念でウオッカとのたたき合いは非常に見応えあるレースでした。
四位JKの以前のお手馬ウオッカに騎乗する武豊JKに、現在のパートナーであるディープスカイに騎乗して挑む四位JK。
不思議な縁を感じる二頭と四位JKとの関係性でした。
しかし、この二頭以外にもダービーではウオッカで負かしたアサクサキングスの主戦となり菊花賞などを制覇しているように、馬の力だけでなく、やはり実力のある鞍上だったことがうかがい知れます。
レッドディザイアでブエナビスタ三冠を阻む
ブエナビスタ大好き人間としては、四位JKの手綱で秋華賞勝利を収めたレッドディザイアは忘れられない一頭です。
デビューから手綱を取ったレッドディザイアはデビューから二戦二勝でエルフィンSを勝利、桜花賞で二番人気に推されます。一番人気はもちろん圧勝で二歳女王に君臨したブエナビスタ。
桜花賞もオークスも二着、ブエナビスタの後塵を拝しました。ブエナビスタの破格の末脚が炸裂し、レッドディザイアは常に二番手でした。
しかも秋初戦のローズSは仕上がり途上のためかブロードストリートにクビ差及ばずの二着、このままシルバーコレクターに…、なんて思っていましたが、本番秋華賞にドラマが待っていました。
第14回秋華賞、この日の狙いはもちろんブエナビスタ、単勝1.8倍の低オッズなんて気にしない、POG馬だしデビューから馬券を買い続けていた馬だし、ここまで来たら牝馬三冠、歴史に名を残して欲しい、そんな願望が秋華賞にありました。
しかし、直線で猛追するブエナビスタを尻目に、鞍上四位JKの懸命の騎乗に応えたレッドディザイアはブエナビスタと全く差の無く並んでのゴールイン。
最終的に7センチのハナ差の勝利をジャッジされたのはレッドディザイア、桜花賞、オークスとブエナビスタ鞍上アンカツさんとの駆け引きに負けてきた感のある四位JKが最後の最後でわずか7センチでもクラシック最後の一冠に手が届いた瞬間でした。
ブエナビスタ大本命で挑んだ予想は無残にも紙切れになっていました。しかもこのレースはブエナビスタの三着降着のおまけ付き、ブエナビスタのファンにとってはなんとも苦いレースとなりました。
思えばレッドディザイアは中団からの早目抜け出し、レースセンスが高く抜け出してからも後続を突き放すレースでしたが、いかんせん同期に常識外れの末脚を持つ馬がいた、と言う点が不幸でした。
しかし、四位JKはレッドディザイアのクラシック三冠ではいずれも完璧にレッドディザイアの実力を引き出しており、やはりココでも実力派ジョッキーの一端が垣間見えます。
その後…
GIではあまり騎乗を見なくなった四位JKでしたが、久々に藤沢(和)厩舎のサトノアレスで朝日杯FS勝利でGI制覇を目の当たりとしました。
結果的にこれが最後のGI制覇となりました。
重賞の騎乗数も減少していましたが、その騎乗数が少ない中で今年2020年のシルクロードSではメンバーの揃ったスプリント戦をエイティーンガールで追い込んで二着入線、奇しくもセンターライジングの仔センターグランタス産駒の牝馬ということで、非常に縁を感じたものです。
センターライジングの孫のエイティーンガールでシルクロードS二着という見せ場たっぷりの好騎乗、ステキでした。
今後は合格した調教師免許でゆくゆくは厩舎開業の運びとなりそうです。名騎手は名調教師とはいきませんが、活躍を期待してしまいます。